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当ページの設置日 : 平成15年11月04日(火)

インボイスとは何か?

「インボイス」とは請求書のことです。

いよいよ、衆議院選挙が大詰めを迎えてきました。 海外版NHKのニュースの中で、 ある候補者が『インボイスに・・・』と言っているのを耳にしました。 これは消費税に絡んでの部分だったと思います。 日本に消費税が初めて導入されたのは1989年(平成元年)4月でした(その時は、3%)。 そして、 1997年(平成9年)に消費税率は、5%に引き上げられました。
消費税が導入されるとき、日本では一般に余り耳にした事が無かった 「インボイス」 と言う言葉を良く耳にするようになりました。 私が記憶しているところでは、ニュースステーションで久米宏が 『英国では 「インボイス」 と言う物を使って消費税の 明細を明記している』と言うような事を言っていました。 一言一句同じではないと思いますが、大体そのような趣旨の 内容をテレビで説明していました。 英国(UK)では間接税の事をVAT (Value Added Tax 付加価値税、税率忘れました)と言い、 ニュージーランドではGST(Goods and Services Tax 商品と役務税、12.5%)と言います。 Goods = 商品、 Services = 有料の役務や奉仕(サービスと言うのも混乱する言葉ですね、私も混乱します)。 日本の消費税の英語名称はConsumption Taxです。
ここでは、消費税を税金と言う観点からの良し悪しを論じるつもりはありません。 そっちの方向へ行きそうになる、 筆者の気持ちを抑えて、インボイスと言う言葉の意味と概念に専念しようと心がけています。

何故 「インボイス」 と言う言葉をそのまま使っているか?
何故、政治家やマスコミの人間は 「インボイス」 と言う言葉をそのまま英語で使うのでしょうか? そんな国民に馴染みの無い言葉を使って国民が納得するでしょうか? しません。 何故なら、概念が理解できないからです。 そして、混乱するだけです。
何故、日本語で請求書と言わないのでしょうか? 何故なら、彼らも 「インボイス」 と言う言葉の概念を理解していないから ではないかと思います。 それ故、日本語に訳す事も出来ず、 さりとて消費税には常に 「インボイス」 と言う書類が付きまとうのでそのまま英語で使っているのではないかと 私は推測しています。 国民をリードする側の彼らが言葉の概念を理解しないで、聞きなれない英語の言葉を そのまま使っていると我々国民は尚更 混乱します。
しかし、常に請求書と言う言葉がぴったりと当てはまるかと言うとそうでもありません。 例えば蕎麦屋で食事して勘定の時、その際はお勘定書きとか言う名称になると思います。 それはその職種や業種により日本語の名称も違います。 しかし、中身は同じ請求書で代金をお客さんに 請求するときに使う書類です。 英語の場合は、その場合でもInvoiceで通用します。 Cafeでもレストランでも、 代金の請求はInvoiceで大丈夫です。 Billの場合も有ります。 細かい請求項目が一連のリストになっている 場合はStatementになります。 その場合でも、Tax Invoice/Statementと言うように併記して有る事が多いです。 税金が発生する場合は、Tax Invoiceになります(NZでは、殆ど税金GSTが掛かりますので、殆どTax Invoiceです)。

何故このような混乱が生じたか?
英語の辞書で 「Invoice」 と言う単語を引いてみてください。 どの辞書でもそこには 「送り状」 と言う訳がまず、 真っ先に出てきます。 これが混乱の元凶です。 これは誤訳です。
他には 「仕入れ書」 と言う意味も載っている辞書も有りますし、「インボイス」 と言うカタカナ にしただけの訳を載せている辞書も有ります。 日本の税関では 「仕入れ書」 と言う言葉を使っています。
そもそも 「送り状」 とは何でしょうか? 宅急便で何かを送る時の伝票などは、「送り状」 です。 しかし、あれは Invoice(インボイス)ではありません。 あれは 「送り状」 です。 「送り状」 を英語で言うならば、D/O = Delivery Orderがより適切だと思います。 D/Oの場合は、普通 納品書と言いますが。 つまり品物に添付して、配送の経過や受け渡しを記録するための伝票です。 従い、宅急便の 「送り状」 には、内容物の単価とか数量は、書かれていません(保険を掛ける時は書くかもしれませんが)。
私は、以前 会社に勤めているときに、ある貿易の講習会へ参加した事がありました。 その時の講師は、ある有名私立大学の教授でした。 その大学は、このHPでも紹介しているニュージーランド学歴資格認定局(NZQA)にも載っている優秀な大学です。
貿易にはInvoiceと言う書類を必ず使います。 例えば、日本からニュージーランドへ中古車を輸出する時、 Invoiceに車の明細を明記しなければ、税関に申告する事は出来ません。 明細の中で最大の重要項目は、 商品名と価格と数量です。 他は、中古車1台毎の詳細を記します。 それはどんな商品であれ同じ事です。 日本の税関で輸出申告するときに使った、Invoiceは、ニュージーランドの買い手(お客さん、Buyer)に他の 書類(B/L = Bill of Lading = 船荷証券 等)と一緒に送られ、ニュージーランドの輸入通関の時にも同じ Invoice を 使います。 支払いの時などの基本書類にもなります。
そう言う訳で、その貿易の講習の時にもInvoiceと言う言葉が良く使われていて、その大学の教授もやはり、 「送り状」 と訳していました。 私は、その先生に質問しました。 『Invoiceと言うのは、請求書と言う意味ではないですか?』と尋ねたところ、 『そう言う意味も有るかも知れませんね』と言う回答でした。 あの教授もInvoiceの意味を正しく理解していなかった。 『そう言う意味もある』のではなく、『そう言う意味』です。 そして、たまたま貿易の時は、 Invoiceは、「送り状」 の役目も兼ねているだけの事です。 これが混乱の元凶 第2かも知れません。 つまり、輸出入の時に使うInvoiceの場合、送り状と言う意味合いもあると言うことです。

Invoice = インボイスは貿易の専売特許か?
Invoiceは、貿易の専売特許ではありません。 英語圏の国々では、国内の商品やサービスの販売、例えば電気代、電話代、水道代、ガス代、Cafeでのコーヒー代、家電製品を買った場合、車を買った場合等などありとあらゆる物品とサービスの販売の際にもInvoiceを使っています。 Invoiceは、請求書ですから、それは当然の事です。 これも私の想像ですが、Invoiceを 「送り状」 と誤訳してしまった 原因は恐らく、Invoiceを貿易と言う観点のみから捉えたせいではないかと思っています。 しかし、海外ではInvoiceは国内取引の請求書として日常茶飯事に使われている書類で、貿易にも使われて居るというだけの話です。
日本の国内でも貿易関係の会社は、国内の取引先にも英語の書類を使う事が有ります。 その中に、請求書もあります。 請求書の英語名称を何と謳っているかと言うと、多くの日本企業の場合、「Debit Note」 と書いています。 これも誤訳です。 「Debit Note」 は、不良返品が発生した際、 代金の調整などをする場合等の、所謂赤伝です。 相手に対して、 ある金額を請求するという意味に於いては、Invoiceと同じですが、「Debit Note」 の場合は、その性質が、 Invoiceと違います。 普通の請求書として使う場合は、「Debit Note」 ではなく、Invoiceが正解です。
このような内容をこのHPに載せるのは、なんか変な気もしますが、私は、前々から気に掛かっていたので、 ここで言う気になりました。 悪しからずご了承の程、何卒宜しくお願い申し上げます。

インボイスの種類 (Types of Invoices) 平成15年11月13日(木) 追記
インボイスにもいくつか種類が有ります。 それを補足して置きます。
  1. Commercial Invoice(コマーシャルインボイス) :
    日本語でぴったり来る言葉が思いつきません。 直訳すると商業用インボイスですが、 目的は、商品を売買する際に使います。 代金の決済が絡みます。 貿易で売り手がお客さん用に 商品の明細や船積予定、単価、合計額などを明記して代金を請求する際に使われます。 税金が発生しない場合に使います。 しかし、そのような場合は、普通Commercialと言う形容詞を付けないで、単にInvoiceだけです。 日本から海外へ輸出する場合は、海外の買い手に消費税を請求できません。 消費税は内国税だからです。 消費税は、つまり日本国内の取引に於いてのみ発生する税金です。 海外へ輸出する商品の仕入れや製造・完成までに発生した消費税は、還付申請できます。
  2. Customs Invoice(カスタムズインボイス) :
    税関用インボイス。 Customsとは税関と言う意味です。 Customと単数形なら、習慣と言う意味になります。 これは輸出通関時に使用します。 当然の事ですが、税関に代金を請求するためでは有りません。 輸出申告が目的です。 船積予定などは暫定的な記載でも構いません。
  3. Proforma Invoice(プロフォーマインボイス) :
    Proformaとは見積書の事です。 見積書と言えば普通、Quotationと言いますが、 何故かこの場合はProforma Invoiceと言います。 理由は分かりません。 これは見積書と同じ役目を果たします。 輸入相手国が事前の輸入許可や輸入認可などを義務付けている場合、 輸出者は買い手にプロフォーマインボイスを事前に送り、輸入国政府の輸入許可を事前に受ける為に使います。 輸入や外国為替に対する規制が厳しい発展途上国向けの輸出の際に要求されます。 先進国の場合は、通常必要有りません。
  4. Consular Invoice(コンスュラーインボイス) :
    Consularとは領事館の と言う意味です。 例えば、南米のどこかの国へ商品を輸出する場合、 在日某国領事館へConsular Invoiceを事前に提出し輸入許可を受けます。 目的は、Proforma Invoiceと同じだと思いますが、 在日領事館で認可を受けるか、輸出相手国国内で認可を受けるかの違いだと思います。 思いますと言うのは、 言い切れる確証が持てないからです。 しかし、まず間違いないと思います。
  5. Tax Invoice(タックスインボイス) :
    Taxとは税金の事です。 これはある国の国内の取引で、消費税、物品税、等の中間間接税が発生する場合に、 Tax Invoiceと言う名称のInvoiceを使います。 これは、Invoiceの種類と言うよりも、単なる区分け名称のような感じです。 NZ国内でGST(Goods and Services Tax = 商品及び役務税 日本の消費税と同じ)が発生する商取引の場合は、 全てTax Invoiceになります。 他の西洋諸国でも同じです。 政治家が選挙の時、インボイスと言う言葉を 使い出すのは、中間間接税とインボイスが密接な関係にあるからです。 日本の消費税の会計上の処理の仕方は、 私は知りません。 ただ、言える事は日本では消費税を算出する基本となるデータとしてインボイスではなく、 帳簿が基本データとなっているので、それをインボイスにしたほうが良いと言う議論のようです。
  6. Shipping Invoice(シッピングインボイス) :
    Shippingとは船便とか航空便とかトラック便で貨物を発送する事です。 船以外で出荷してもShipとは何か変ですが、 実際は使います。 区別する国もあるようですが。 Shipとは要するに出荷すると言う意味です。 貨物の代金以外に例えば船積経費を別途に買い手に請求する場合などに使います。 又は、貨物代金は、裸の値段でCommercial Invoiceで請求し取り扱い料金を別途請求する場合なども、 Shipping Invoiceを起こして買い手に請求します。
上記のInvoicesの種類は、必ずしもそれぞれの名称のInvoicesを用意しなければいけないと言う意味ではありません。 用途別に分けられた名称です。 例えば、項目1と2は、同一の何も頭に付かないInvoiceと言う 名称の一種類のInvoiceで済みます。 又、銀行の買取用のInvoiceも同一のInvoiceで済ませることが出来ます。 これらを一種類の同じInvoiceで済ませるのが、 賢いやり方です。 項目3~6の場合は、それぞれの名称のInvoiceが別途必要です。 他にもInvoiceの種類はあるかもしれません。 恐らく聞いた事も無いようなInvoiceがあると思います。 私の思いつくInvoiceの種類は、以上です。 多少でも参考になれば望外の喜びです。

下の写真は、私がこちらで見ている有料放送のSky TVのインボイス(Tax Invoice)です。 有料TV放送の代金請求に「送り状」を使うわけがありません。 電気、水道、電話などの代金請求にも全て「インボイス」が使われます。 つまり、これはインボイスの汎用的な意味は、「送り状」では無く「請求書」である事を物語っています。 Sky TVでは映画とかスポーツ、ニュースなど、 色んなチャンネルを購読できます。 その内容により料金は、違います。 NHKを購読するとアジアのチャンネル (韓国、台湾、香港、中国)も6チャンネルくらい一緒のパッケージになって付いてきます(要らないのですが)。

インボイスの写真